六本木交差点にたたずむラベンダー色のビル。
この色は、戦後三代にわたって愛され続けてきたビューティーサロン リラの象徴。
移り変わる街並みのなかで、祖母の代からサロンを受け継ぐ別宮陽子さん。
幼少のころから、美容の道を真摯に歩んできた先代の背中をみて育ち、海外生活も経験した別宮さんは、
”日本のいいもの”には作り手の道があり、そこには深い哲学があると語る―
今回は、ビューティーサロン リラ 別宮陽子さんに、”日本のいいもの”について語っていただきました。
”日本のいいもの”は、”人間にとっていいもの”。
パミロールも、そんな”日本のいいもの”の一つだと思います。
幼少期~
六本木で生まれ、”本物”を見て育ってきた
祖母(故・別宮百代さん)が戦後、女手一つで子ども2人を育てるために美容の道へ進みました。
日本美容専門学校や美容組合の創立にも関わり、1950年に六本木にリラを創業したんです。
当時の六本木は多様な人種の方や文化人が集まっていて、おしゃれなものや文化で溢れていました。
サロンに来られるお客様もどこか洗練された雰囲気で、それだけにお客様のオーダーは1ミリ単位での技術の細かさでした。
その1ミリにこだわってお客様と真剣に向き合う祖母と母の姿が、とても強く印象に残っています。
それから何十年も経って、当時のお客様とお話する機会がありました。
「あのときサロンできれいにしてもらったのが、一番の思い出なの。」
お客様が嬉しそうに話して下さるのを聞きながら、私も祖母や母がサロンに立つ姿を思い出して、とても幸せな気持ちになりました。
20~30代
海外で過ごす中で、”日本のものづくり”の素晴らしさに気づいた
21歳のときに美容師の免許を取りました。
でも、祖母も母もその道の大変さを私に味わわせたくなかったようで、「好きなことをしなさい」と言われたんです。
その言葉どおり、大学卒業後は映画関係の仕事をしたり、海外から来たヘアーアーティストの通訳で日本中を回ったりしていました。
そのときに経験した新鮮な驚きや感動は、今も鮮明に覚えています。
本当にいい経験をさせていただいたと思います。
その後、ブラジル人の夫と結婚して12年間をリオで過ごしました。
海外での生活は何もかもが新鮮で、驚きの連続。
ネイルなんかも、一見するとめちゃめちゃなやり方なのに、いざ仕上がってみるとなぜかかっこよくてきれいなんですよね。
当時の私はこういう海外のものが魅力的に見えて、あまり日本のものに目が向くことはありませんでした。
そんな私が日本の良さに気づかされたことがありました。
それはあるお寿司屋さんに行ったときのことです。
カウンターに立つ板前さんが、目の前のお客様に最高のおもてなしをしようと真摯にお寿司を握る姿が、すごく心に響いたんです。
海外でたくさんの人や文化、技術、モノに触れたから、よけいにそう感じるのかもしれませんが、
日本のものづくりの素晴らしさは、技術だけのことではないんですよね。
むしろ、そこに込める思いの深さ、真摯さ、向き合う姿勢が日本のものづくりなんだと気づきました。
今思えば、祖母や母がサロンのお客様に真摯に向き合う姿は、日本のものづくりそのものだったように感じます。
このときから、日本のいいものを守り、伝えていかなければと考えるようになったんです。
40~50代
昔からそばにあった、”本当にいいもの”
41歳のときに日本に帰国し、サロンに戻りました。
当時私は自然のものが人の体に良いと思っていて、無農薬やオーガニックのハーブを自分で調合して、お客様に植物療法のフェイシャルを行っていました。
ところがしばらくすると、自分の手がかぶれてかゆくてどうしようもなくなったんです。
「自然のもの=肌にとっていいもの」というような単純なものではないということを、この体験を通して知りました。
本当に肌にとっていいものはなにかを考えて頭に思い浮かんだのが、
母の代から45年以上、いつもサロンのショーウィンドウにあったパミロールの存在でした。
私は、美容の最も基本でありながら最も難しいことが、「洗う」ことだと思っています。
当たり前のこと、基本のことが実は一番難しい。
「肌を守りながら汚れだけを落とす」という、母が大切にした美容の基本。
母がいつもパミロールをそばに置いていた理由が、そのときになってわかりました。
しばらくしてからスロンの製品も使うようになったのですが、
なかでもフェイスマスクは、「とにかく気持ちがよかった。」と喜ばれるお客様の姿と肌が美しくなっていく様子に、
何よりの喜びを感じました。
以前、パミロールの会長とお話をして感じたことがあります。
それは、人への思いやりだったり、寄り添う心。
そういうものがパミロールの製品にも息づいているように感じます。
肌にのせたときの気持ちよさも、肌が受け入れていくのも、
まじめに肌と向き合って、深い思いを込めて作られた”本物”だからだと思います。
これから
”日本のいいもの”を伝えていきたい
剣道、茶道、華道…。
日本の「道」とつくものは、あまりにも深い哲学があります。
それは、ほかのどんな道であってもそうです。
道の真ん中には深い哲学があって、深い思いが込められている。
どんな道であれ、道を極めた方の行き着く先には、同じ深い哲学があるものだと思っています。
私は心に溜まったものを落としたいとき、書道をすることがあります。
ゆっくり丁寧に字を書きながら自分と向き合うと、心が深く落ち着きます。
お米やお味噌汁を食べたときもそう。心と体が満たされて、とても落ち着くんです。
日本のいいものは、人間にとっていいものだと感じます。
そしてそれは日本のものづくりにもいえることで、世界に誇れる素晴らしいことだと思っています。
例えば「美しさ」に関していえば、価値観が多様化している今、
昔のような「きちっとした美しさ」が再び「日本の美」として輝きを放っています。
これからもっともっと、日本のいいものが輝いていく。
そう確信しています。
幼いころから当たり前にそばにあった”日本のいいもの”を、守り、伝えていきたい。
私にとって、パミロールもその一つです。